修行僧ぷってんの雑記

移動メインのトラベラー

北海道新幹線を改めて考えてみる その3

前回、前々回の記事はこちら。まだ続きます。

 

www.travelpudding.com

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新幹線の大宮優位論について

よく、「大宮発着だと羽田に行くより楽だから、このあたりの需要は取れる」という声を聞きます。

 

確かに、所要時間だけを見れば「どちらか好きな方を選べ」という状態にまで持っていけるとは思います。

 

しかし、大宮は東京の衛星都市でしかないんです。たとえ、さいたま市の人口が100万人を超えていても、それだけで北海道新幹線のユーザー増加に繋がるか?というのは、正直疑問が残ります。

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というのも、今の北海道新幹線は、観光客の比率が高いと言われており、季節によって需要が変動して安定していません。

 

なんなら、北海道新幹線が強いとされる冬場では、全体の旅行者数が減っているのです。

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http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/kakusyu/toukei/unnyunougoki/gepou/31.01/31.01_ryokaku.pdf

 

 

つまり、今の北海道新幹線は、季節変動に左右されないビジネスユーザーを必要としているのです。

 

と考えると、やはり東京駅から乗客を引っ張って来る(そして東京駅へ運ぶ)ことが必要になるでしょう。で、「4時間の壁」問題に収束するわけです。

 

「飛行機から20%シェアを奪う」という意味

そもそも航空機から20%シェアを奪うとはどういうことでしょうか。

 

 

「年間900万人が利用する羽田〜新千歳間の20%、180万人を新幹線が輸送するから…」

 

「飛行機は1日あたり5000人空席になる!」

 

「じゃあ1便500人運ぶB777-300が5往復いらなくなる計算だ!」

 

「その要らなくなった5往復分、別の目的地に飛ばすことが出来る!」

 

この理屈は正しいでしょうか。

いいえ、全く正しくありません。

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20%シェアを奪うということは、トータル人数ではなく、1便あたりで計算し、ここから20%乗客数を引かなくてはいけません。

 

現在JALやANAは、早朝や深夜を除き、国内線最大収容人数を誇るB777(定員約500人)を1時間に1本飛ばしています。

 

加えて、羽田〜新千歳には、JALとANA以外にも、エアドゥとスカイマークが飛んでいます。座席提供数は新幹線の比ではありません。

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さて、前回の記事で、関東〜札幌でのシェア20%の仮定を当てはめた場合、1時間あたり片道280人新幹線に乗客が流れる計算でした。

 

仮に、羽田〜新千歳便が運休に追い込まれ、羽田と新千歳の発着枠が空くような事があるとすれば、「スカイマークとエアドゥの乗客が、全員北海道新幹線に移る」ぐらいの事が起きないとありえない話です。

 

 

 

北海道新幹線開通で、新千歳〜西日本の飛行機が増える??

こちらも先ほどの話に付随しますが、ほぼありえないと言って良いでしょう。

 

なにしろ、現状ですら座席提供数に対して、需要数があまり高くないのですから。

 

↓こちらの資料に載ってあります。

https://www.city.chitose.lg.jp/fs/1/4/4/9/8/_/__29______________.pdf

 

 

 

2019年現在、新千歳との間で定期便が飛んでいる西日本の空港は「福岡、広島、岡山、松山、神戸、伊丹、関西」です。

※出雲と徳島は夏季限定の運航。

 

需要にかなり偏りがある(中四国は1日1〜2便が基本、九州は福岡以外なし)ため、とても便利というわけでもないですが、劇的に不便というわけでもないですよね。

 

ここから新規、そして追加で飛ばすとしたら、「さあどこ?」という話になってきませんか?

 

 

 

 

最終的には、函館、青森と花巻から新千歳の発着枠を細かくかき集められる程度で、劇的な変化は見られないかと思います。

 

※というか、そんなに新千歳の発着枠が問題なら、MAX74席しか乗せられないDHC8-Q400や、MAX76席しか乗せられないERJ170をポンポン飛ばせないと思うのですが…

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ならば、仙台はどうかと言うと、そう楽観視出来ない要素があります。

 

 

 

避けられない料金の問題 その1

そう、料金面です。

 

これに関しては一概に比較することは出来ない…と思われがちですが、実際はそこまで露骨に差があるわけではありません。

 

 

 

 

仮に、東京〜札幌が新幹線片道(乗車券+特急券)でトータル27000円だとしましょう。

 

※別にこれはデタラメで計算しているわけではありません。

 

運賃は、将来の東京〜札幌間(約1073km)とほぼ同距離にあたる、東京〜白老間(約1070km)の13280円。

特急料金は、北海道新幹線区間が、「東北新幹線の1.5倍の料金を全線で適用する」と計算して、東京〜新青森7200円、新青森〜札幌7110円、ここから520円差し引くので13780円となります。

 

「新幹線の正規運賃と飛行機の割引運賃を比較するのはナンセンスだ!」と吹き上がる方もいらっしゃるでしょうし、前日にチケットを買ったと仮定して、飛行機の値段を見てみましょう。(まさか全車指定席の列車に乗るのに、当日にチケットを買うわけありませんよね?)

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JALやANAですらこんなもんです。

 

「飛行機だと直前に買うと高い!」と言えるレベルではありません。それ以上に新幹線が高すぎます。

 

※ちなみに、特便運賃に頼らずとも、法人向け運賃なら、何度でも変更出来る運賃も存在します。

https://www.jal.co.jp/dom/fare/rule/r_ebusiness6.html

https://www.ana.co.jp/book-plan/fare/domestic/guide/pdf/19s.pdf

全く同じ計算方法で、仙台〜札幌を当てはめると、新幹線の運賃が10470円、特急料金が11550円、しめて22020円になります。

 

これも同じ条件で当てはめるとこんな感じ。

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マスコミは、新幹線の延伸開業の時には、必ずと言っていいほど値段を報道しますよね。

 

 

いずれ「北海道新幹線は高い」という声が、ネットを支配するようになる(というか、もうなっている)と思うのですが、いかがなものでしょうか。

 

 

 

 

避けられない料金の問題 その2

東京〜新函館北斗間、正規運賃22690円の新幹線にも、割引運賃が存在します。前日まで買えるスーパーモバトクを使えば15460円、えきねっとトクだ値なら、17160円まで安くなります。

 

ただし、新幹線の割引運賃というのが、一般客からすれば「使いやすい」「分かりやすい」「浸透している」とは言えないでしょう。

 

割引を受けるには、会員登録をしたり、クレジットカードを作らなければならない、という煩わしさも無視出来ません。特に、えきねっと の悪名の高さは、もはや説明の要らない領域でもあります。

 

 

 

一方、ツアーはどうでしょうか。

とりあえず以下のツアー比較サイトを用いて、4月の1泊2日函館ツアーを検索してみました。

https://www.tour.ne.jp

が、出てくるのはJALやANAなどの航空利用のプランばかり。なかなか新幹線用のツアーが出てきません。

 

探し続けた結果、なんと全76ページ中27ページ目に、ようやく「片道だけ」新幹線利用のプランが出てきました。料金は、1人1万円ぐらい違ってきます。

 

一方で、5月や8月などの繁忙期は、新幹線の方が圧倒的に安くなります。新幹線の運賃は、飛行機と違って、年間を通じてほとんど料金が変わらない事が理由だと思われます。

 

とは言うものの、繁忙期の収入だけで、1年間の収入を賄うことなど到底出来ないため、北海道新幹線は苦戦しているのです。

 

 

 

青函区間はどうするのか

現在、新幹線と在来線が共用しており、スピードアップの阻害になっているのが、青函トンネルとその前後の区間。

 

トレインオントレインや貨物新幹線、はたまた青函連絡船を活用するなどの案が出ています。

 

 

北海道新幹線がここまで苦境に立たされ、スピードアップできず、赤字を生み出しまくっているのがこの共用区間なのですが、なんと「第二青函トンネルを掘る」という選択肢も視野にあるというのです。

 

 

こうすれば、貨物列車と新幹線の運行を区別でき、さまざまな問題を解決出来るとのことですが、当然トンネルを掘る建設費、維持費が追加でかかってくるわけです(そもそも、この費用をどこが負担するのでしょうか。え?国?)

 

 

おそらく、今からトンネルを掘っても間に合わないでしょうし、11年後の札幌延伸の時でも、青函区間の問題は放置されたままな気がします。

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ちなみに、新幹線が札幌に繋がる時、青函トンネルは開通から42年経つ事になります。

 

 

維持管理費は今より膨らみ、保守点検の時間は長引き、最悪運行に支障が出る可能性もあると考えるのが自然だと思うのですが、そこに疑問を抱く人はあまり多くなさそうです。札幌延伸で全て上手くいくと思っているからでしょうか。

 

 

 

まとめ

北海道新幹線の札幌延伸を、今か今かと待ちわびている人も多いことでしょう。しかし、そう簡単に話は進みません。

 

 

今回触れなかった、「JR北海道は新幹線車両を新造できる体力があるのか」「開通済みの区間の赤字は返済できるのか」「そもそも2030年までJR北海道が存在するのか」という問題もありますが、あえて今回は触れないでおきます。

 

結局北海道新幹線は、

「関東・東北~札幌を直通して速達化を図りたい」

「道内の地域間輸送も果たしたい」

「新千歳がダウンした時のバイパスにしたい」

「JR北海道の経営状態をよくしたい」

という大きすぎる夢を、すべて背負ってしまおうとするのが何よりの問題と言えます。

 

 

JR北海道は、事実上「JR北海道新幹線」になったとしても、2030年まで生き長らえるでしょうけど、函館までしか繋がっていない以上、厳しい状態はまだしばらく続きそうです。

 

もう少し続きます。